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【Will&Nexus 39/49】組織のドロドロは、「人」のせいじゃない。

2026 2/19
Will&Nexus
2026-02-182026-02-19
Keisuke Ishino
目次

ドロドロの正体

組織の人間関係がうまくいかないとき、「人の問題」だと思いがちだ。

「あの人は自己主張が強すぎる」「あの部署は協力的じゃない」「あの上司は聞く耳を持たない」。

でも、このシリーズで繰り返し書いてきた通り、多くの「人の問題」は、構造の問題を人に投影しているだけだ[※1]。

では、人間関係のドロドロの「構造的な正体」は何か。

エゴ(防衛本能)の衝突だ。


エゴは「武装」である

記事27[※2]で、変化に反対する人は「今のハッピーを守りたいだけだ」と書いた[※2]。

人間関係のドロドロも、同じ構造だ。

人は、不安を感じると防衛する。自分の領域を守ろうとする。自分の成果を守ろうとする。自分の存在価値を守ろうとする。

この防衛反応が、外から見ると「エゴ」に見える。自己主張が強い。縄張り意識が強い。他者を攻撃する。

でも、エゴの正体は「不安からの武装」だ。安心感があれば、人は武装する必要がない。武装を解けば、エゴは静まる。


安心を「構造」で作る

「もっとオープンにコミュニケーションしましょう」「お互いを尊重しましょう」。

こうした呼びかけは、善意ではあるが、効果は限定的だ。なぜなら、不安の原因(構造)が残ったまま、行動だけを変えようとしているからだ。

記事34[※3]のブリーフシステム[※3]を思い出してほしい。個人の行動を変えるには、個人の内側のプログラムを書き換える必要がある。でも、組織全体の行動を変えるには、環境(構造)を変える方がはるかに効率的だ。

では、どんな構造が安心感を生むのか。

情報の透明性だ。

記事11[※4]で書いた通り[※4]、見えないものは不安を生む。評価がどう決まっているかわからない。方針がどうやって決まったかわからない。自分がどう思われているかわからない。

わからないから、想像する。想像するから、最悪のシナリオを思い描く。最悪のシナリオから身を守るために、武装する。

情報を透明にするだけで、防衛反応は大幅に減る。 人の性格を変えなくても、人間関係のドロドロは構造で解消できる。


「性格を直せ」は設計の放棄

「あの人の性格を直してほしい」。

マネジメントの相談で、こういう要望を受けることがある。

でも、僕はこう答える。

「性格を直す必要はありません。環境を変えましょう」。

攻撃的な人がいる。その人の攻撃性は、性格から来ているように見える。でも、よく観察すると、攻撃的になるのは特定の場面だけだ。情報が足りないとき。自分の立場が脅かされていると感じるとき。評価が不透明なとき。

つまり、その人が攻撃的になるトリガーは、環境にある。トリガーを取り除けば、攻撃性は収まる。

これは性格を否定することではない。性格はそのままでいい。性格の「発火点」を知り、発火させない環境を設計する。 それが、構造的な平和の作り方だ。


第3部との違い——「ハック」から「自走」へ

第3部では、組織を「ハック」する方法を書いた。センターピンを見つけ、施策を打ち、構造を書き換える。設計者が能動的に手を入れる話だった。

第4部では、設計者自身——つまり「個」のメンテナンスを扱った。OSを更新し、認知を調整し、セルフマネジメントのリズムを整えた[※5]。

この第5部では、第3部とは違う問いに向き合う。

第3部の問いは「組織のどこにバグがあるか」だった。第5部の問いは、「設計者がいなくても、組織が自分で回り続けるにはどうすればいいか」だ。

ハックは一回限りの介入だ。でも、設計者がずっと介入し続けなければ回らない組織は、まだ「自走」していない。

個のノイズが減ると、面白いことが起きる。自分を守るための「エゴの壁」が不要になる。壁が不要になると、他者やチームとの間に、エネルギーがスムーズに流れ始める。

構造的平和とは、個と組織の間にあるエゴの壁を、構造の力で溶かしていくことだ。そして、エゴが溶けた先に、設計者がいなくても回り続ける「自走する組織」が見えてくる。

性格を変えなくても、人は変わる。環境が変われば、同じ人が驚くほど穏やかに、そして力強くなることがある。


関連記事

  • [※1] 【Will&Nexus 05/49】ペンギンは、空を飛ばなくていい。
  • [※2] 【Will&Nexus 27/49】変化に反対する人を、責めてはいけない理由。
  • [※3] 【Will&Nexus 34/49】あなたが重いのは、見えない「〜すべき」を背負っているからだ。
  • [※4] 【Will&Nexus 11/49】なぜあの人が昇進して、自分じゃないのか。
  • [※5] 【Will&Nexus 38/49】意志の力が要る時点で、設計ミスだ。
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  • 【Will&Nexus 38/49】意志の力が要る時点で、設計ミスだ。
  • 【Will&Nexus 40/49】「戦略」の定義がズレている組織は、絶対にうまくいかない。

この記事を書いた人

Keisuke Ishinoのアバター Keisuke Ishino

石野 敬祐(Keisuke Ishino)
経営と人事の「かかりつけ医」/ Will&Nexus 代表

外資系コンサルからキャリアをスタートし、IT・業務改革コンサル、人事・組織コンサル、事業会社の人事責任者を経て独立。組織の問題のほとんどは領域の境界線にある——その確信から、経営・人事・業務・ITを横断しながら「センターピン(本当に倒すべき一手)」を見極める仕事をしている。

視界を失いかけた経験、長い介護の日々、自分のとらわれへの気づき——そうした経験が、見立ての精度と、誠実に関わるという姿勢をつくってきた。

趣味は一つに絞れない。歌、写真、ゲーム、麻雀、ボクササイズ……その時々の興味に引っ張られて、何がメインかは常に変わる。飽き性というより、好奇心が次の扉を先に開けてしまうタイプらしい。どんな領域でも「なぜこれはこう機能するのか」と考えてしまう癖は、仕事と地続きだと思っている。

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