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【Will&Nexus 25/49】「何をやるか」は合っていた。「いつやるか」が間違っていた。

2026 2/19
Will&Nexus
2026-02-182026-02-19
Keisuke Ishino
目次

最初のドミノはどれだ

施策の内容は正しかった。方向性も合っていた。チームの覚悟もあった。なのに、空回りした。僕は何度もこの経験をしてきた。

原因の多くは、「何をやるか」ではなく「どの順番でやるか」にある。

ドミノを想像してほしい。100個のドミノが並んでいて、最初の1個を倒せば、残りの99個が連鎖的に倒れる。でも、最初に倒すドミノを間違えると、連鎖が途切れる。あるいは、倒したいドミノの手前に、まだ立っていないドミノがあれば、そこで止まる。

正しいことでも、順番を間違えれば失敗する。 これが「シーケンシング」の問題だ。


「急がば回れ」の構造

記事20[※1]でセンターピンの話を書いた[※1]。何を打つかは大事だ。でも、「いつ打つか」「何を先に整えてから打つか」は、同じくらい大事だ。

たとえば、人事評価制度を変えたいとする。

制度の設計は完璧だ。公平で、透明で、成果と行動の両方を評価する仕組み。理論的には素晴らしい。

でも、いきなり導入するとどうなるか。

現場のマネージャーは、新しい評価基準を理解していない。部下への説明もできない。「また上が何か始めた」という冷ややかな反応。制度は導入されたが、形骸化する。

何が足りなかったのか。土壌だ。

新しい制度は「種」だ。種を蒔く前に、土壌を整えなければ芽は出ない。この場合の土壌とは、マネージャーの理解、部下との対話の場、制度の目的を共有する機会だ。

急がば回れ。種を蒔く前に、土を耕す。 それがシーケンシングだ。


インフラが先、施策は後

シーケンシングの基本原則は、インフラが先、施策は後だ。

電気が通っていない土地にエアコンを置いても意味がない。道路がない場所にトラックを走らせても荷物は届かない。

組織も同じだ。

情報共有の仕組みがないのに、「もっとコミュニケーションを取れ」と言っても無理だ。心理的安全性がないのに、「失敗を恐れずチャレンジしろ」と言っても響かない。

「正論が通らない」のは、正論が間違っているからではなく、正論を受け取るためのインフラが整っていないからだ[※2]。

だから、施策を打つ前に問うべきは「この施策が機能するためには、何が先に整っている必要があるか」だ。


順番を決める三つの基準

では、具体的にどうやって順番を決めるか。

基準①:依存関係

「BはAが終わってからでないとできない」。こうした依存関係を整理する。これが最も基本的な順序付けだ。

基準②:抵抗の大きさ

記事27[※4]で書く「生存本能の受容」の話と関わるが、変化に対する抵抗は、順番によって大きく変わる。

いきなり大きな変化を突きつけると、抵抗も大きい。最初に小さな変化から始めて、成功体験を積み重ねると、次の変化への抵抗が小さくなる。

小さな成功を先に作る。 それが、大きな変化を通すための布石になる。

基準③:連鎖効果

記事24[※5]の因果の地図で書いた通り、一つの施策が正の連鎖を生むポイントがある。連鎖効果が最も大きいものを先に打つ。そうすると、後続の施策が自然と通りやすくなる。


自分の人生にも順番がある

最後に、個人の話に戻りたい。

キャリアにも、シーケンシングがある。

「いつかこうなりたい」という理想がある。でも、いきなりそこには辿り着けない。

記事47[※3]で「遠回りが教えた平和」について書いた[※3]。僕のキャリアは遠回りに見えた。でも、振り返ると、それぞれの段階で「先に経験しておくべきこと」を経験していた。

コンサルで「構造を分析する力」を身につけた。講師で「伝える力」を身につけた。事業会社で「中から構造を変える経験」を積んだ。介護で「定数と変数の峻別」を体感した。

どれか一つでも飛ばしていたら、今の自分にはなれなかっただろう。

人生の順番は、後からしか見えない。 でも、「今の経験が、未来の何に繋がるか」を意識するだけで、歩き方は変わる。

正しいことを、正しい順番でやる。焦らず、一つずつ。それが、設計者のシーケンシングだ。


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この記事を書いた人

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石野 敬祐(Keisuke Ishino)
経営と人事の「かかりつけ医」/ Will&Nexus 代表

外資系コンサルからキャリアをスタートし、IT・業務改革コンサル、人事・組織コンサル、事業会社の人事責任者を経て独立。組織の問題のほとんどは領域の境界線にある——その確信から、経営・人事・業務・ITを横断しながら「センターピン(本当に倒すべき一手)」を見極める仕事をしている。

視界を失いかけた経験、長い介護の日々、自分のとらわれへの気づき——そうした経験が、見立ての精度と、誠実に関わるという姿勢をつくってきた。

趣味は一つに絞れない。歌、写真、ゲーム、麻雀、ボクササイズ……その時々の興味に引っ張られて、何がメインかは常に変わる。飽き性というより、好奇心が次の扉を先に開けてしまうタイプらしい。どんな領域でも「なぜこれはこう機能するのか」と考えてしまう癖は、仕事と地続きだと思っている。

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