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【Will&Nexus 36/49】「もっと積極的に発言しましょう」に、ずっとダメ出しされてきた。

2026 2/19
Will&Nexus
2026-02-182026-02-19
Keisuke Ishino
目次

ずっと「ダメ出し」されてきた

学校の通知表。「もう少し積極的に発言しましょう」。就活のフィードバック。「リーダーシップをもっとアピールしてください」。会社の評価面談。「コミュニケーション力を改善してください」。

人生は、「足りないもの」を指摘される連続だ。

そして、指摘されるたびに、そこを直そうとする。苦手なことに時間を使い、エネルギーを注ぎ、少しだけ改善して、また次の「足りないもの」を指摘される。

この繰り返しに、消耗していないだろうか。

記事05[※1]で書いた話をもう一度思い出してほしい[※1]。ペンギンに空を飛べと言う残酷さ。 苦手なことを気合で直そうとするのは、まさにこれだ。


バグは直すものか、迂回するものか

プログラミングの世界では、バグに対するアプローチが二つある。

一つは、バグを直す(Fix)。原因を突き止め、コードを修正する。これが基本だ。

もう一つは、バグを迂回する(Bypass)。バグがある部分を避けて、別のルートで同じ目的を達成する。バグが深刻だが修正コストが高すぎるとき、実務ではよく使われる手法だ。

人間にも、直すべきバグと、迂回すべきバグがある。

記事30[※2]で、ハードウェア(性格)とソフトウェア(OS)の区別を書いた[※2]。ソフトウェアのバグは直せる。考え方の癖、思い込み、古いプログラム。これらは書き換えられる[※3]。

でも、ハードウェアに近い特性——内向的か外向的か、論理的か感覚的か、慎重か大胆か——は、直すコストが極めて高い。直そうとすると、莫大なエネルギーを消費する。しかも、直ったとしても、無理をし続けなければ維持できない。

ハードウェアに近いバグは、直すよりも迂回した方が合理的だ。


個人版「飛行機」を造る

迂回するとは、具体的にどういうことか。

記事05[※1]の「飛行機」の話を、個人に適用してみよう。

ペンギンは飛行機に乗れば空を飛べる。苦手なことを克服するのではなく、苦手なことを補う仕組みを造る。

たとえば、僕はプレゼンテーションの「見た目の演出」が得意ではない。スライドを凝ったり、身振り手振りでパフォーマンスしたりすることは、正直言って苦手だ。

でも、記事05[※1]で書いた通り、研修講師として結果が出たのは、演出を磨いたからではなく、自分の言葉で、自分のリズムで話すというスタイルを見つけたからだ。

苦手な「演出」を直すのではなく、得意な「論理で語る」にリソースを集中させた。足りない演出は、スライドの設計で補った。つまり、苦手をバイパスして、得意で勝負する構造を作った。

これが「個人版飛行機」だ。


欠点を愛でる

もう一歩踏み込もう。

苦手なことは、本当に「欠点」なのか。

内向的であることは、欠点か。慎重であることは、欠点か。のんびりしていることは、欠点か。

多くの場合、それは環境が定義した欠点だ。外向的なリーダーシップが求められる環境では、内向的であることは欠点に見える。でも、深く考えて正確に判断することが求められる環境では、内向的であることは強みになる。

つまり、特性そのものに良し悪しはない。その特性と環境の組み合わせに、合う・合わないがあるだけだ。

記事05[※1]で書いた「噛み合わせ」の問題だ。自分が悪いのではなく、構造がズレているだけだ。

だから、自分の特性を「直すべき欠点」として扱うのではなく、「設計に活かすべき素材」として扱う。

素材を知り、素材を活かす構造を設計する。それが、自分のバグをバイパスするということだ。


全エネルギーを「得意」に乗せる

最後に、エネルギーの話に戻ろう。

このシリーズでは、エネルギーの効率を繰り返し語ってきた。摩擦を減らし、Willが真っすぐ届く構造を作る。

苦手を直すことに使うエネルギーは、摩擦そのものだ。

苦手なことに10のエネルギーを注いで、2の改善が得られる。これは効率が悪い。

得意なことに10のエネルギーを注いで、20の成果が得られる。これは効率がいい。

苦手克服に使っていたエネルギーを、得意なことに全投入する。 それだけで、トータルの成果は劇的に変わる。

もちろん、最低限の社会的スキルは必要だ。人として基本的なことができなければ、組織で機能しない。でも、「最低限」と「完璧」の間には大きな差がある。最低限を満たしたら、あとは得意に全振りした方がいい。

苦手を直す人生は、もう終わりにしよう。得意なことに全エネルギーを乗せる人生を、設計しよう。


関連記事

  • [※1] 【Will&Nexus 05/49】ペンギンは、空を飛ばなくていい。
  • [※2] 【Will&Nexus 30/49】性格は「ハード」だ。変えるのは「ソフト」でいい。
  • [※3] 【Will&Nexus 34/49】あなたが重いのは、見えない「〜すべき」を背負っているからだ。
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この記事を書いた人

Keisuke Ishinoのアバター Keisuke Ishino

石野 敬祐(Keisuke Ishino)
経営と人事の「かかりつけ医」/ Will&Nexus 代表

外資系コンサルからキャリアをスタートし、IT・業務改革コンサル、人事・組織コンサル、事業会社の人事責任者を経て独立。組織の問題のほとんどは領域の境界線にある——その確信から、経営・人事・業務・ITを横断しながら「センターピン(本当に倒すべき一手)」を見極める仕事をしている。

視界を失いかけた経験、長い介護の日々、自分のとらわれへの気づき——そうした経験が、見立ての精度と、誠実に関わるという姿勢をつくってきた。

趣味は一つに絞れない。歌、写真、ゲーム、麻雀、ボクササイズ……その時々の興味に引っ張られて、何がメインかは常に変わる。飽き性というより、好奇心が次の扉を先に開けてしまうタイプらしい。どんな領域でも「なぜこれはこう機能するのか」と考えてしまう癖は、仕事と地続きだと思っている。

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