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【Will&Nexus 16/49】「わかる」とは「分ける」こと。

2026 2/19
Will&Nexus
2026-02-182026-02-19
Keisuke Ishino
目次

「何が問題なのかわからない」という問題

仕事で「何が問題なのかわからない」と感じたことはないだろうか。目の前にモヤモヤがある。でも、それを言葉にできない。言葉にできないから、動けない。

実は、この「わからない」には構造がある。

仕事でも、人間関係でも、人生の選択でも、問題を「塊」のまま扱っている限り、答えは見つからない。

今回は、この「分解する」という思考の技術について書いていく。


「分かる」の語源

日本語には、面白い構造がある。

「分かる」という言葉の語源は、「分ける」だ。

何かを理解するとは、それをバラバラに分けることだ。混然一体になっているものを、要素ごとに切り分けて、それぞれの正体を見る。そうやって初めて、人は「分かった」と言える。

逆に言えば、「分からない」というのは、「分けられていない」ということだ。

問題が大きくて手に負えないとき。何から手をつけていいかわからないとき。もやもやして言語化できないとき。それは、対象が塊のまま目の前にある状態だ。

だから、考える力とは、分ける力だ。


「時間がない」を分解する

身近な例で考えてみよう。

「時間がない」。

これは、ビジネスパーソンが最も頻繁に口にする言葉の一つだと思う。そして、最も「分解されていない」言葉の一つでもある。

「時間がない」を塊のまま扱うと、解決策は「もっと頑張る」か「何かを諦める」しかなくなる。筋トレ的な解決か、我慢か。どちらもこのシリーズでは推奨していないアプローチだ。

では、「時間がない」を分解してみる。

まず、「何に」時間がないのか。

全部に時間がないのか。特定のタスクに時間がないのか。それとも、「考える時間」がないのか、「作業する時間」がないのか。

次に、「なぜ」時間がないのか。

タスクの総量が多すぎるのか。一つひとつに時間がかかりすぎているのか。割り込みが多くて集中できないのか。そもそも「やらなくていいこと」をやっているのか。

こうやって分解していくと、「時間がない」という一枚岩の問題が、複数の小さな問題に変わる。

たとえば、「割り込みが多くて、企画書を書く時間が取れない」。これなら対処できる。午前中の2時間はチャットを閉じる。会議を火曜と木曜に集約する。それは構造(Nexus)の設計だ。

問題は、分解した瞬間に「扱える」サイズになる。 逆に言えば、分解しないまま悩んでいる限り、永遠に「時間がない」と言い続けることになる。


対立を分解する

均衡の設計[※1]とつなげて考えてみよう。

組織の中の対立は、たいてい塊のまま語られている。

「営業部と開発部の仲が悪い」。

これを塊のまま扱うと、「お互いを理解しましょう」「もっとコミュニケーションを取りましょう」という精神論にしかならない。飲み会でもやりますか、という話になる。

でも、分解してみるとどうだろう。

何が対立しているのか? 営業は「すぐに機能を追加してほしい」。開発は「品質を保つために計画通りに進めたい」。

なぜ対立しているのか? 営業がクライアントの要望を直接受けていて、それを開発に「そのまま」渡しているからだ。クライアントの「今すぐ欲しい」と、開発の「計画通りに作りたい」がぶつかっている。

対立の本当の原因は何か? 「営業と開発の仲が悪い」のではなく、クライアントの要望を優先順位付けして、開発の計画に組み込むプロセスがないことが原因だ。

ここまで分解できれば、打ち手が見える。優先順位を決める会議体を作る。要望を受けてから開発に渡すまでのバッファを設ける。クライアントへの「いつまでに対応します」という見通しを共有する仕組みを作る。

飲み会ではなく、構造で解決できる。


「分けてはいけない」という思い込み

ここで一つ、よくある誤解に触れておきたい。

「物事を分解すると、全体像が見えなくなるのではないか」という心配だ。

たしかに、分解しすぎて部分最適に陥るリスクはある。木を見て森を見ず、というやつだ。

でも、この心配には順序の間違いがある。

まず分解して、それぞれの要素を理解して、その上で全体を再構成する。 この順序が大事だ。

最初から「全体を俯瞰しよう」とすると、何も理解できないまま雰囲気で判断することになる。それは「全体を見ている」のではなく、「何も見えていない」のだ。

分解は、全体を見失うための行為ではない。全体をより深く理解するための行為だ。

料理を考えるとわかりやすい。美味しいカレーを作りたいとき、「カレーとは何か」を漠然と考えても何も進まない。でも、ルー、スパイス、肉、野菜、火加減、煮込み時間、と分解すれば、どこをどう改善すればいいかが見える。そして、分解したそれぞれを最適化した上で、もう一度「カレー」として統合する。

分解は、再構成のための準備だ。バラバラにして終わりではない。


感情も分解できる

分解の対象は、目に見えるものだけではない。

感情も、分解できる。

「仕事が辛い」。これは塊だ。分解しないと、「辞めるか我慢するか」の二択になってしまう。

でも、「辛い」を分解してみる。

何が辛いのか。仕事の内容か。人間関係か。時間の長さか。評価されないことか。やりたいことができないことか。

たとえば、分解した結果、「仕事の内容は好きだけど、上司とのコミュニケーションがストレスになっている」とわかったとする。そうなれば、「辞める」は正しい解ではないかもしれない。上司との関わり方を変える。報告の仕方を変える。あるいは、別の部署に異動する。

塊のまま「辛い」と感じていたときには見えなかった選択肢が、分解した瞬間に現れる。

これは別の記事で書いた「ハンドルを握る」話とも繋がる[※2]。人生のハンドルを握るためには、自分が何に対してどう感じているのかを、自分で分解できる必要がある。塊のまま「辛い」と感じている状態は、ハンドルを握れていない状態でもある。


分解の三つのレンズ

分解にはいくつかのアプローチがある。ここでは、よく使う三つの「レンズ」を紹介したい。

① 「何」と「なぜ」で分ける

表面的な現象(何が起きているか)と、その背後にある原因(なぜ起きているか)を分ける。先ほどの「営業と開発の対立」がこれだ。表面は「仲が悪い」。背後は「プロセスが不在」。

② 「誰」で分ける

「みんなが困っている」は、たいてい嘘だ。正確には、Aさんは困っているが、Bさんはむしろ今の状態を歓迎しているかもしれない。「誰が」「何に」困っているのかを分けると、本当に対処すべきポイントが見えてくる。

③ 「いつ」で分ける

時間軸で分解する。今すぐ対処しなければいけないことと、来月でいいことと、半年後に考えればいいことは違う。全部を「今」に積み上げるから「時間がない」になる。時間軸で分ければ、今日やるべきことは意外と少ないかもしれない。

この三つは、均衡の設計で書いた「対立の正体を特定する」ための具体的な道具だ[※1]。「何」「誰」「いつ」。この三つの問いを当てるだけで、塊は驚くほどバラバラになる。


「分ける」から始まる

このシリーズでは、何度も「構造を変える」と書いてきた。

でも、構造を変えるためには、まず構造が見えなければならない。見えるためには、分けなければならない。

分解は、設計者にとっての最も基本的な武器だ。

問題が大きすぎるとき。対立が解けないとき。もやもやが言語化できないとき。そのすべての入り口は、「まず、分けてみる」ことだ。

分けたからといって、すぐに答えが出るわけではない。でも、分けた瞬間に、「何がわかっていて、何がわかっていないか」がわかる。それだけで、次の一手が見えてくる。

分かる=分ける。 この等式を、一つの思考の癖にしてほしい。


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この記事を書いた人

Keisuke Ishinoのアバター Keisuke Ishino

石野 敬祐(Keisuke Ishino)
経営と人事の「かかりつけ医」/ Will&Nexus 代表

外資系コンサルからキャリアをスタートし、IT・業務改革コンサル、人事・組織コンサル、事業会社の人事責任者を経て独立。組織の問題のほとんどは領域の境界線にある——その確信から、経営・人事・業務・ITを横断しながら「センターピン(本当に倒すべき一手)」を見極める仕事をしている。

視界を失いかけた経験、長い介護の日々、自分のとらわれへの気づき——そうした経験が、見立ての精度と、誠実に関わるという姿勢をつくってきた。

趣味は一つに絞れない。歌、写真、ゲーム、麻雀、ボクササイズ……その時々の興味に引っ張られて、何がメインかは常に変わる。飽き性というより、好奇心が次の扉を先に開けてしまうタイプらしい。どんな領域でも「なぜこれはこう機能するのか」と考えてしまう癖は、仕事と地続きだと思っている。

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